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需給バランスを高めることの重要性
みなさん、こんにちは。

ある高級レストランで最近体験した事から、需給バランスの大切さを考察してみたいと思います。

このレストラン、普段はコース料理が基本の、味には定評のある高級に属するようなレストランです。ところが夏休みのイベントだったのでしょうか、予約制のディナーバイキングを3日間限定で開催しました。
それをネット上で知った私はさっそく電話をかけ、予約をさせて頂きました。90分の時間制でしたが、以前利用させて頂いた事があるため、期待をして出掛けました。

予定時間をほんの5分ほど過ぎてお店に到着しました。名前を告げてテーブルへ案内されました。料理が並んでいる場所を見ると既に多くのお客さんが集まっています。夏休みイベントのため家族連れが多く、中には8名以上の団体のようなご家族もいらっしゃいます。私もさっそく料理の場所へ行きましたが、そこでびっくりしてしまいました。すべての料理が空っぽなのです。集まっていた人だかりは実は料理をよそっているのではなく、待っている人たちだったのです。私も仕方なく料理を待つ人の輪に入りましたが、一向に出てくる気配がありません。ようやく1種類だけ料理が運ばれてきました。しかし、1分も経たないうちに料理のお皿は空になってしまいました。
もっとびっくりしたのは、こんな状態がずっと繰返され続けたことです。つまり一向に改善されないのです。ご年配のおば様方は怒り出しています。「一体どういうことなの!」お怒りもムリありませんね。時間制で高い料金を支払うのに待ち時間ばかり、テーブルに着いている時間よりも料理の前で待つ時間の方が長い状態なのですから。

ここでこのお店の不手際をいくつか整理してみます。

-料理が空になった皿が常態化しており、料理が新たに供給されても待たされている需要量が多過ぎるため、直ぐに欠品してしまう。数品の料理が瞬間的に時々欠品した状態ではなく、全品に近い料理が「常に無い状態」となっている。
-料理は30~35種類程度と思われるが、肉や魚料理は結構手が込んでいると思われる。
-ドリンクはバイキングの対象外で個別オーダーか飲み放題別料金となっている。ただし、お水は無料提供となっているが、店員が各テーブルをまわって給水する仕組みとなっている。しかし料理の提供が遅れるなどで店側は混乱しており、給水に回る事が出来ず、客は水を飲むのも待たされている。
-料理は1箇所に集中して配置されている。このため、料理のまわりに「不自然な行列」が出来てしまい、自分が欲しい料理に直ぐに到達出来ない。
-デザートは提供されたものの、なぜかコーヒー・紅茶とともに最後に提供された。このため、デザートの時間帯は当日最大の混乱(殺到と奪い合い)を招いてしまった。
-店内をマネジメントする人が見当たらず、各店員はお客から何か言われる度に店の奥へと走っている。つまり、お客以上に混乱している。


では、このお店はどんな対応をすればよかったのでしょうか。

まず、料理の提供状況から見て、厨房の設備が少ないか料理人が少ないことは明らかです。普段限られたお客にコース料理を提供する形態からして無理もありません。
このように供給側に制約が多い場合は需要を絞り込むか供給する製品(料理)を絞り込む必要があります。

需要を絞り込むとは、つまり、人数をもっと限定的にするということです。1回でお店に入る人数分すべての予約を受けてはいけません。お店に入る人数分を受け付けるということは、すべての供給が約束出来るという条件がある場合のみです。また、今回は予約制となっていましたが、この予約の意味が供給側で適切に理解出来ていなかったと考えられます。予約とは確約するという事です。つまり受領するけど確約は出来ないというのは予約ではありません。推測で言ってはいけませんが、料理の責任者とテーブル側の責任者との間で事前の話し合いがきちんと出来ていなかったのではないでしょうか。

次に供給する製品を絞り込む点です。これは手の込んだ料理を少なくするか、いっそのこと無くしてしまうと言うことです。味には定評のあるお店ですから、手が込んでいない料理であっても美味しいはずではないでしょうか。客の構成も家族連れが多いのですから、お子さんに人気のあるカレーやから揚げなら比較的短時間で供給出来るはずです。
単純に料理の数を減らすという打ち手もあります。しかしこれは慎重に数を設定しなければ顧客の不満を招きます。この場合は料金との兼ね合いを検討しなければならないでしょう。朝・昼・夜とこれだけバイキングが浸透している訳ですから、顧客側も料金でどの程度のバイキングかという相場感を持っています。この相場感が大切です。自分のお店を基準にして料金設定するとこの感覚から外れてしまう場合があります。
またバイキングでは「質」よりは「種類」と「量」が重視される場合が多いでしょうから、「種類」を余りにも削ってしまうとそもそもバイキングが成立しなくなります。

更に別の観点から、製品の製作や提供にお客さんを参加させるという打ち手もあります。例えばカニなどその典型ではないでしょうか。殻付きのまま提供し、最終的な消費の場ではお客さん自らが殻を剥きます。顧客満足度を下げることなく、作業の労力(工数の負荷)を低減するという手法はサービスビジネスでは重要です。

需要と供給のバランス以外にも上で指摘した不手際への細かな対応も重要ですね。
例えばお水もセルフサービスにすること。
例えば料理をもう少し分散して配置すること。
例えばデザートも最初から提供することなどてす。
また、全体を束ねるマネジメント力も重要です。マネジメントが不在の場合、個々人がバラバラの動きをしてしまうため、ムダやムラが発生しやすくなります。繁忙な場合こそ、個人の能力を最大限に発揮させ、全体として纏まりを生むためのマネジメントが求められます。個人レベルで調整が効くのは平常時や規模が小さい場合に限られます。
会社も同様です。会社規模が小さい、取り扱い製品が少ない、取引先や仕入先数が少ないうちは個人レベルの調整でもなんとか機能しますが、これが大きくなってしまうと個人レベルでは何ともならなくなります。組織力とマネジメント力が重要となってきます。

ところで、何度も手を挙げて店員さんを呼び、ようやくお水をもらった私の隣に座っていらっしゃったおば様方のお1人が店員さんに「こんなことならオーダーバイキングにすればよかったのよ・・・」とおっしゃっていました。店員の女性は申し訳なさそうに「そうですね、すみません」と対応されていました。
しかし、これは適切なアドバイスでしょうか?否ですね。そもそも供給側に制約がある訳ですから、供給制約を上回る個々の顧客が個々の料理をしかもバラバラのタイミングでオーダーしたらどうなるでしょうか。
通常のバイキングとは在庫補充型の生産方式です。欠品したあるいはしそうな料理を基準量だけ生産しますし、消費のサイクルから次はこの料理を作ろうという見込生産でもあります。ですから平準化が容易です。しかしオーダーバイキングとなると受注生産です。しかも同一の料理であってもオーダーのタイミングがちょっとでも違えばまとめ生産が出来ません。この状況はお寿司屋さんでネタが違うだけとか、立ち食い蕎麦屋さんでトッピングが違うだけという場合には有効ですが、このお店には対応は困難でしょう。このお店でオーダーバイキングなどしようものならたちまちどのお客さんも長時間待たされることになります。しかも今回直面した状況より更に深刻となります。それは、単に待つ場所が料理の置かれた場所か自分のテーブルかということではありません。どういうことかと言いますと、待ち状態があちこちで発生すればそれは自分のテーブルでなくても直ぐにわかってしまいますよね。そうすると、顧客は「今食べたいもの」だけでなく、どうせ待たされるのだからと「今食べないしこの先も食べるかかどうかわからないけど余分に注文しておこう」とサバ読みを始めるのです。サバ読みがあちこちで発生すれば供給は更に遅れ始めます。

幸い、終了時間まで暴動(?)は起きずに済みました。しかし残念ながら、この日来店したお客さんで「また是非来たい!」と思って支払いを済まして帰宅された方はまずいらっしゃらないのではないでしょうか。

私自身は、このような状況のバイキングは初めての経験でびっくりしました。しかしその一方で需給バランスの重要性について間近で体験することが出来たことは貴重な経験と思います。

このお店のその日の反省会はどのように行なわれたのか、気になる所ではありましたが・・・


みなさん、未来に向って叡智を出しましょう!!
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海外工場と国内工場の関係
みなさん、こんにちは。

最近の円安傾向を背景に、輸出型の大企業が業績見通しを上方修正する動きが出ているようです。とは言え、日本企業の海外進出は依然として強まっています。
今回はこの海外展開と日本国内拠点の位置づけについて考えてみたいと思います。

日本企業の海外拠点_20130205

海外生産比率_20130205


表の通り、日本企業の海外進出はずっと増加傾向にあり、生産高比率も高くなっています。私がご支援させて頂いてきました企業においても海外生産高比率が60%超とか、100%海外生産というところもあります。

日本の製造業企業が海外へ進出する場合は主に生産拠点の展開が中心となります。もちろん、今日では現地のニーズに合わせて現地で製品の企画・開発を行う企業も増えてきてはいます。さてこの生産拠点の展開時に日本国内の生産拠点はどのような役割を担うことになるでしょうか。

1.技術移転 国内工場で開発された製品や生産ラインを海外工場に移転する役割
2.技術指導 海外工場で生産に関わる諸活動を円滑に実施していくための技術や技能の教育訓練を行う役割
3.トラブルシューティング 日々の業務で発生する問題に対して実際に現地に赴いたり、連絡対応等で対処する役割

このため、生産技術部門を中心に海外工場の立上げにあたります。海外工場の規模も小さく、取り扱い品目も少なく、かつ技術的にもそれほど高度でなければ、海外工場の立上げに要する負荷も高くはなりません。とは言え、何も知らない現地作業者へ1から教えることは大変な労力です。
以前は確かに、汎用品、廉価品は海外で、高付加価値品は国内でという棲み分けもありました。しかし海外のニーズが高度化してきており、競合が国内企業からグローバル化してくると、そうも言ってはいられなくなります。海外の拠点数も徐々に増えてきます。
こうなると国内工場の海外支援負荷はどんどんと高まっていきます。
生産機能の海外展開にも色々なパターンがあります。国内では試作のみ残し量産機能はすべて海外へ移転してしまう企業もありますし、上述のように廉価汎用品を海外で生産する場合もあります。しかし国内の生産量をある程度は絞り込むものの、やはり国内でも操業を続けるというのが主流のようです。さてこの場合、国内でも操業しているということは各部門の仕事はなくなってはいないということです。この状態で複数の海外生産拠点の支援に当たるというのは大変な負荷となります。担当者が海外のトラブルシューティング等で日本不在の状態の時に、今度は国内工場で問題が発生したら大変な問題となってしまいます。
そして最も重要なことは、新たな技術開発や技術研究が停滞してしまうということです。業種にもより一概には言えませんが、エレクトロニクス製品等は非常に製品のライフサイクルが短くなっています。海外を含めた競合他社が直ぐに新たな製品を市場に投入してきます。新技術開発は企業の生命線と言える重要な要素です。しかしこれが停滞してしまえば今日の競争に太刀打ちできなくなってしまいます。その上、技術力で海外工場よりもはるかに上でなければ、海外工場支援など出来なくなってしいます。どこの生産拠点よりもはるかに高い技術力や技能を持っていなければいけないということは重要です。
さて、何とか海外支援の高負荷状況を打破するため、技術者の育成や人員確保を行いたいところですが、問題があります。技術者は短期間では育成できないことと、新たな人材確保が大々的に行えないということです。
そもそも国内でこれ以上人件費をかけられないために人件費の安い海外で生産を行うわけですから、新たな人材確保という方向性は矛盾を来たすことになります。ここに各企業の葛藤があります。
では、海外支援の負荷を低減し、海外は海外で独自に工場を操業してもらえればと考えたくもなりますが、技術移転や技術指導が徹底されていないうちにこのような対応をしてしまえば、海外工場の技術力は高まらず、改善活動も進まなくなります。結果としては日々のトラブルが多発する、最悪の場合は不良品を大量に出荷してしまうということにもなりかねません。

ではどうすればよいのでしょうか。色々と打ち手は考えられます。
1.社内で分散した技術力を集中させ、ここで海外支援を包括的に行う
2.海外支援を行いながら、徐々に人材育成にも力を入れていく
3.国内の技術者も並行して育成していく(若干の増員もやむなしと経営トップが承認する)

今回は、製造現場に関わる生産技術面について書きましたが、間接部門や生産管理についてもまったく同様のことが言えます。しかしどのような技術や技能にしても適切でない技術や技能を指導してはいけません。私の経験で言いますと、生産管理に関する正しくない知識をそのまま教えているという企業がありました。教わる方はその知識の素人ですから、熟練者からそう教えられれば間違ったまま自分の知識や技術にしてしまいます。そもそも正しくない知識等をもう少しよりよくしようという改善など愚の骨頂でしかありません。
そのような意味でも国内の工場は一番でなくてはならないのです。
海外のさまざまなニーズを短期間に製品化する技術力、サプライチェーン上で日々発生する複雑さや問題へ全体最適の視点から取組む技術力、技術や知識を相手が腹落ちするように教えるスキルなど多岐にわたり一番を目指さなければなりません。
トップダウンで全社を挙げて取組むべき重要事項です。昨今は「グローバル人材」というキーワードが至るところで声高に言われていますが、私自身は今回のテーマの方がよっぽど重要と考える次第です。

みなさん、未来に向って叡智を出しましょう!!
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閉店時間から考えること
みなさん、こんにちは。

つい最近のことですが、夜中の1時に目が覚めてしまいました。寝られそうもないので仕方なく1時に起床しました。コーヒーを飲んで仕事をしようと思ったのですが、家族はまだ寝ていますので、音を出して起こしては悪いと思い、深夜もやっているファミリーレストランへ出掛けました。
行った先は大手のファミリーレストラン、しかし24時間営業ではなく3時までの営業となっていました。まあ3時でもいいかと思いその店に入りました。
ドリンクとスープを注文し、資料を作成していたのですが、実に静かで最初は大変満足していたのですが、2時を過ぎた頃でしょうか、店員さんが片付けを始めたのです。コーヒーのサーバーが止められ飲めなくなりました。そして2時30分過ぎに「ラストオーダーとなりますが・・・」と確認に来られました。私は特に追加注文はないので「いりません」と答えました。これを機にという訳でもないのでしょうが、私がスープをすすっている横で今度は床をモップで掃除を始め、別の店員さんも出て来て、ほうきと塵取りで掃除を始めたのです。塵取りの音がガタガタと気になります。店員さん自身はテキパキと清掃されているのですが、まるで私(一応はお客です)など存在しないかのような行動です。そして空いているテーブルの椅子を机の上に上げ始めます。時計を見るとまだ2時36分頃です。
さすがに「帰れ!」と言われているような気がして支払いをして店を出ました。
サービス業でしかも顧客との接点にある飲食店でこのような対応をされたことにはビックリしました。
この店の「顧客起点の事業運営」「顧客満足度」とはどう定義されているのだろうか・・・

そして一番気になったのが「3時まで営業」の定義です。2時30分にお客さんが店に居られる雰囲気ではなくなるのであれば営業時間は2時30分ではないのだろうか。では3時とは店員さんたちが後片付けをして帰宅する時間なのだろうか。しかし2時30分に「ラストオーダー」の確認をしにきているのだから、追加のオーダーをすればこの「帰れ!」サインが出ている中で飲食を強いられるのだろうか。そもそもお客さんが食事をしている横で掃除を始めることに何の躊躇も申し訳なさの感情も起きないのだろうか。色々と考えてしまいます。

私は別にこの情報をネット上で拡散して、こんな店には行かないようにと言うつもりはありません。しかし繰返しになりますが、ビックリしました。

ところでこのお店のように、3時閉店の定義がよくわからない、あるいは顧客から見えにくいということはしばしばあります。例えば、顧客の納期通りにモノが納入出来たか否かを計測する経営指標に「納期遵守率」があります。
ある企業では最初に内示を受領した時点の納期に対する自社が出荷した日時で評価しています。ある企業は色々と納期調整をして最終的に顧客に約束した納期で評価しています。またある企業は確定注文を受領して顧客に回答した納期で評価しています。またある企業では出荷するのが精一杯で評価すらしていません。
また企業によっては人によって納期遵守率の定義が異なっている、つまり会社として統一・浸透していない場合もあります。
ここで重要なことは何を目的として「納期遵守率」を集計し評価するのかということです。自社の経営状態をよく見せるための集計では意味がありません。経営者は喜ぶかもしれませんが、経営者の喜びと顧客の喜びが乖離してしまう危険性があります。
「納期遵守率」の例で言えば、「顧客起点」の集計・評価でなければなりませんよね。決して自社起点であっては意味がありませんし、自己満足で終ってしまいます。そんなことなら集計などする必要はありません。しかしこれがしっかりと決められていない、決められた通りにPDCAが運営されていないということがしばしば見受けられます。

あるいは、24時間納期回答、48時間納期回答というのもあります。これはどこからどこまでのアクティビティの時間を指しているのか、納期回答を出す側と受ける側で合意形成されていなければ成立しません。
そのような意味ではアスクルの配送納期は非常にわかりやすいと思います。配送エリアが決められてはいますが、当日の朝11時までに注文すれば、当日中に品物が届きます。顧客との間でトラブルや齟齬が出にくいと言えます。

やや異なる観点でお話しすます。これも経営指標ですが、ROE(Return on Equity)=株主資本利益率というのがあります。これは株主が投資した資本でどれだけの利益が上げられたかを計測する指標です。日本企業は欧米に比べてROE値が非常に低いと指摘されています。海外の資本家からすると低いROEでは文句を言いたくなるということもあるでしょう。
しかし、恣意的か否かは別としても資本を減らしたらどうなるでしょうか。資本が減ればROE値は高くなります。資本が減った後、資金調達が必要な場合は借金で対応するという手もあります。もし投資家にROEを良く見せるのが目的であるならばこういう施策も打つことが出来てしまいます。

まずは指標の定義をしっかり行うこと。その基本は他社が採用しているからとか、今注目されているからではなく、誰のための何を目的とした指標であり、その指標に基づいて業務やマネジメントをどう運営していくかです。つまりPDCAの業務基準の策定です。実績だけ集計して「今回はよかった、悪かった」もダメです。

双方でわかりやすい、目的が明確ということが重要です。

ところで、ファミリーレストトランの件に戻りますが、どなたか「いや、こんな感動的なサービスを経験しました!」というエピソードはないですか?「こんなひどい経験をした!」がとかく集まりやすいと思いますが、こんな経験を集めても人生楽しくはなりませんよね。

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『The Product Mindset 2012』の調査結果
みなさん、こんにちは。

米国の第三者安全科学機関であるUL Inc.は、製品の製造、販売、購入、消費に対する製造者と消費者の意識を解き明かす『The Product Mindset 2012』の調査結果を発表したようです。
この調査は、ULが昨年2011年に続き第2回目の世界調査として、米国、中国、ドイツ、インドの4カ国を対象とし、製造者(1,202社)と消費者(1,201人)への聞き取り調査に基づきまとめたものです。今年の調査では、急速な楽観主義の後退とともに、品質・安全・環境に対する期待が高まっていることが浮き彫りとなったようです。

以下ニュース記事より転載させて頂きます。

(転載開始)

■製造者は、サプライチェーンの加速するグローバル化、複雑化に圧力を感じている
・ 資材調達におけるグローバル化が加速する中、製造者の46%が今後5年間に自国外からの調達を増加させることを検討している。その内の79%は、既存の調達国からの移行ではなく、新しい国を追加しようとしている。
・ 43%の製造者は、自社の新市場への進出能力にあまり満足していない。
・ 76%の製造者は、グローバル調達が製品品質を向上させる手段になりうると考えている。この項目は、前年と比べ19%増加しており、製造者が、不安定で経済的にも厳しい世界市場において競争力を高める必要があると考えていることを反映している。
・ 最良の原料、材料、部品を使って製品が作られていると信じている消費者は30%にすぎない。
・ 57%の消費者が、自分達が購入する製品の製造国を認識している。その一方で、62%の消費者が、製品の組立て地より、その部品の原産地を知ることの方が重要と考えている。
・ 44%の消費者が、製品の原産地を知ることの重要性は今後5年間でさらに高まると回答している。
・ 平均で48%の消費者が、製造者とその資材供給者(サプライヤー)が、労働者の倫理的かつ公正な待遇に加え、職場の安全確保に十分な対策を講じていないと感じている。
・ 中国では4分の1以下(24%)、インドでは半数以下(40%)の消費者が、製造者とその資材供給者(サプライヤー)が、労働者の倫理的かつ公正な待遇に加え、職場の安全確保に十分な対策を講じていないと考えている。米国の65%、ドイツの消費者の64%に比べ、対照的である。

■品質は引き続き重要な牽引役
・ 製造者は、今日の成功をもたらした最も重要な要因として、「品質」を挙げており、それは将来も変らないと考えている。
・ 38%の製造者が、消費者にとって最も重要なことは「品質」であると回答している。
・ 91%の製造者が、製品に対する性能試験の重要性が増していると考えている。
・ 消費者は、購入製品を決定する一番の要因として、「品質」を挙げている。
・ 食品、建材、ハイテク機器、スマート機器の各分野において「品質」は、消費者にとって最
も重要な製品情報として、一位または二位に位置づけられている。

■消費者の知識レベルの向上
・ 製品安全の課題として、ハイテク機器ではオンライン・セキュリティ、住宅用建材では有害排出物質および室内空気汚染を第一の懸念事項であると回答し、消費者は製品分野により、やや異なる見解を示している。
・ 消費者は、身の回りで頻繁に使用される製品の安全性をより重視する。製品安全を重要だとする順位は、生鮮品(29%)、加工食品(27%)、住宅用建材(23%)、ハイテク機器(10%)、スマート機器(9%)となっている。消費者が、食品や建材の購入を検討する際、最も必要とする情報は製品安全だが、AV機器やスマート家電の購入を検討する際に必要とする3大情報の中に製品安全は含まれていない。
・ 製造者の68%が、製品に含まれる原材料や部品に関する情報を消費者に明示することが大切だと考えている。

(転載ここまで)

調査結果を見る限り、生産機能、調達機能のグローバル化はますます加速するものと言えます。そして今後のテーマは設計・開発機能のグローバル化でしょう。これまでの高性能品の開発・設計は国内に残すにしても、新興国へ販売する製品については古い製品や現製品群のローエンドモデルと捉えては商機を逃すことになるでしょう。そうではなく、現地のニーズを新たな製品群として開発~生産~販売するサプライチェーンのモデルの構築が重要と考えられます。

更にこのように各サプライチェーン機能がどんどん海外へ移転あるいは新設されていく中で、グローバルに拠点をコントロールできる人材を早急に確保することも極めて重要な経営テーマです。
まだまだ緩やかな動きにある例えばアフリカのマーケットであれば、現地の人材を採用し、これからじっくり何年かかけて育成していくという手法もあり得ると思います。
しかし既に成長の軌道に乗ってしまった中国などでこんな悠長な手法は取れません。外部からのグローバル人材の登用を視野に入れざるを得ないと思われます。
この延長線上にあるのがM&Aですが、世界的にもあまり成功している事例は少ないですね。デロイト・トーマツの統計によりますと、世界540カ国でM&Aで成功しているのは三分の一となっています。

また私が以前から言っているサプライチェーンのネットワークを出来る限り正しく把握することです。材料調達先、外注先、販売先の開拓が加速するほどにサプライチェーンのネットワークは複雑化し、リスクも高まります。また各企業毎に担当をつければ社内の人員も増加し管理も複雑化していきます。せっかくサプライチェーンを強化しても知らないうちに複雑化したり重複が発生したり、ボトルネックが変化していては強みが発揮できなくなります。この点、絶えず変化し続けるサプライチェーンをマネジメントする組織が必要と言えます。
また、社内の仕組みとしては、従来は取引先からの要請に基づいて構築してきたトレーサビリティ(材料調達、製造、販売履歴を追跡する仕組み)は、アフターサービスも含めてもはや必須といえるでしょう。特に食品、医療関連は重要と言えます。

やるべきことは山積しています。これをチャンスと見るか、脅威と見るかは皆さん次第です。

因みにこの調査は米国、ドイツ、中国、インドで行われたようです。米国の機関であるため米国が対象国となっているのはわかりますが、やはり日本はもはやサプライチェーンへの影響力が低いと見なされているのでしょうか。危機感を持ってしまいます。

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サプライチェーンの川上と川下企業
みなさん、こんにちは。

今回はサプライチェーンにおける各企業の位置関係とその特徴について考えてみたいと思います。
製造企業では、原材料や素材を購入し、これを加工・組立し付加価値をつけて最終製品とし、市場へ流通させ最終顧客へ提供します。
この原材料や素材を提供する企業が川上、最終製品を組立てる企業が川下の位置づけになります。わたしたち消費者は川下の位置づけとなりますね。

では川上と川下でどちらが利益率が高いのでしょうか。
圧倒的なブランド力を持つ企業-ナイキ、コカコーラ、ルイヴィトンなど-であれば川下の企業の利益率も高くなります。しかし日本企業の場合はご存じの通り大きな経営危機に陥っているブランドの川下企業もあります。パナソニック、ソニー、シャープなどですね。
なぜ、このような事態に陥るのでしょうか。理由はいくつもあり複合的でしょうが、大きな要因はやはり価格競争に陥っているということです。日本国内は既に20年近くデフレが続いています。世界的に見てもこれだけ長期に渡りデフレが続くのは珍しいことです。メーカーと小売との関係を考えてみて下さい。デフレ圧力で小売は低価格で他社との差別化を図ろうとします。メーカー側は小売の棚割り政策で何とか自社製品を多く置いてもらうために販売促進を行います。以前ほどはクローズアップされなくなりましたがリベート(取引先による割戻金)問題があります。
 -メーカー製品のチラシ掲載料
 -陳列棚に対する陳列料
 -陳列露出場所料
 -値引き特売セール料
などです。
販売目標達成のためにどうしてもプッシュ型の販売になってしまうメーカーでは、目標達成のために大きな販促費を捻出してしまい、利益率を圧縮してしまいます。
結果として損益分岐点を高めてしまうため、固定費圧縮の心理が働きます。しかし販促費は抑制できず、棚から外された「小売から儲からない」と判断されてしまった製品の寿命は短くなるばかりです。何せ自社だけでもフルラインアップで製品を市場に送り出している上に、数々の競合他社も負けず劣らずのラインアップで勝負してきます。小売の棚スペースは限られているため、売れなければ「さようなら」となります。結局新たな製品を企画・開発するために研究・開発費も削るわけにはいきません。結局製造関連部門や間接部門のコスト削減が最も効果が出るということになるわけですね。
さらに、グローバル化でアジアの廉価製品により価格競争が過熱します。高機能・高付加価値で勝負したはずなのに販促費により利益は吹っ飛んでしまいます。
小売の側にしても自社の利益に貢献してくれる商品が嬉しいわけです。したがって、自社にとってのみの「目玉商品」であれば棚から外されることもないのですが、メーカー側は他の小売に対しても同様の対応をとり数を確保しようとします。そうなると他社でも売られる、どこの店でも売られる、価格もほとんど変らないとなれば、もはや「目玉商品」ではなくなってしまいます。それでも当初の価格を維持出来ていればまだよいのですが、他の小売が低価格を仕掛けてくればそこから値崩れは急激に進みます。やがて棚から外される運命を辿ります。
しかし、高いブランド料をのせ、しかも値引きをしなくても売れるスーパーブランドを有するメーカーの利益は高いのです。
因みに、みなさんもご存じの装飾品のブランドにカルバン・クラインがありますよね。ブランド価値を構築してきたこの企業も1990年代後半に安売り大衆化路線に走りブランド価値を著しく下げてしまいました。現在は低価格商品の販売を規制しているようです。この例からもわかるように高いブランド力を維持するためには安易に安売りをしてはならず、プレミアム/高級路線を出来る限り長く続けることが重要となります。

さて、川下の方はどうでしょうか。
川下とは素材産業です。素材とは鉄鋼、非鉄金属、化学、繊維などの業種です。エレクトロニクス業界で言えば、ヒロセ電機、ローム、村田製作所などが代表格です。実はこれらの企業は全世界で70%以上のシェアをとっています。この圧倒的なシェアで高い利益率を維持しているのです。
素材産業といっても我が国は資源が乏しいので原料自体は輸入します。そして製造品目を国内/外の企業と取引しています。ところで、近年の円高で輸出型の我が国は大変だと言われていますが、本当にそうでしょうか。
東日本大震災以来、エネルギー不足がクローズアップされ、石油が大変重要な役割を果たしていますが、円高だからそこ、安く調達できているわけですよね。
1995年頃から始まった低価格競争、レギュラーガソリンが1ℓ=100円が今や1ℓ=140~150円前後をうろついています。これが円安に振れれば当然ガソリン価格は高騰してしまうわけです。みなさん、1ℓ=300円にもなったら車に乗りますか?
更に別の観点から指摘しますと、我が国の企業数は421.3万社あり、そのうち中小企業(製造企業では従業員300人以下)は99.7%です。
製造企業だけで見れば、全体で223,648事業所、大企業は僅か3,216事業所ですから、中小企業が98.6%を占めています。
そして、中小企業で輸出を行っているのは2.4%しかありません!これはすべて中小企業庁が公表しています。
つまり円高で困るのはほんのひと握りの輸出型の大企業だけなのです。
要するにですね、日本は輸出貿易国でも何でもなく、内需型の企業を抱える国なのです。円高で海外から安い素材が入ってくるから循環しているわけです。僅か数パーセントの企業のために敢えて円安にするなんておかしいわけです。円高とは円が他国通貨に対して安心感があるからこそ強いのです。安心だから買われるのです。こういうことはなぜマスメディアに取り上げられないのでしょうか。
私たちは貿易赤字だの、円高で業績悪化だのという情報だけですっかり騙されていると言えますね。用心しましょう!

さて、川上企業の特徴に話しを戻します。川上企業は政策的か否かはここでは問題にしませんが、需給調整により価格交渉の優位性を発揮できる点があげられます。例えば今、素材メーカーが1社のみで、4社の製品メーカーと取引をしていたとします。自社の生産量を100とし、各社とは均等に25ずつしていたとします。均衡が保たれているため各製品メーカーとの取引価格はまったく同じとします。
しかし、ある時、生産量を75に減産したらどうでしょうか。各製品メーカーには25の生産能力があり、これを維持しなければ稼働率が下がり製造コストが上昇してしまいます。しかも全体で75ということは、どこかの製品メーカーが外される可能性があるわけです。これは大変です。素材確保に各製品メーカーは必死になります。自社が外されては困るからです。そこで従来通り25の取引を成立させるために価格交渉で従来より高値での買い取りに応じる可能性が高くなります。
ここで重要なことは、この素材メーカーは新たに素材製造で付加価値を高めたのでも何でもないということです。つまり、サプライチェーン上でボトルネックとなる部分に利益が発生するわけです。ボトルネックでかつサプライチェーン上でいなくては困る企業は多くの利益を上げることができ、いなくても誰にとっても困らない企業はほとんど利益を上げることができない構造となるわけです。
最近の傾向は素材が世界的に供給過剰なため割安になっています。これはシェアが拮抗している場合に他社と同等の施策をとらないとシェアが奪われてしまうために起きます。圧倒的なシェアであれば他社が低価格で攻めてきてもシェアの低い企業はだいたい生産能力の限界があるため一時的に少なからずシェアを奪われるかも知れませんが、需給バランスが戻った時点で解消されます。
また低価格には更に上を行く低価格で戦略を仕掛けてもこれまでの高利益率に支えられた体力があります。
とは言え、グローバル市場でこれまでより競合が増えているのは確かですね。

別の観点から川上企業と川下企業を比べると、認知度の違いもあげられます。最終製品を製造しているメーカーや流通・小売は認知度が高く、人気企業のランキングでも必ず上位に入りますよね。これは我々との接点が多いことと、先に説明しました販促活動でメディアへの露出度が高いことが理由です。一方の川上企業は我々との接点がほとんどありませんし、メディアへもあまり出てきません。iPhoneを手にした人だってアップル社は知っていても、iPhoneの中の電源コイルや樹脂性基盤をどこの企業が製造しているかなんて考えませんよね(因みに、電源コイルはTDKやローム、樹脂性基盤はイビデンのようです)。

サプライチェーンの位置づけの特長のほんの一部をご紹介しました。当然のことながら、事業基盤強化のための改革テーマも異なってきます。皆さんの会社はどの方向性に改革すべきでしょうか。

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