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顧客リピート率を高める要素とは何か
みなさん、こんにちは。

今回は、顧客からのリピート獲得や他社への切替えがどのようにして起こるのか、その一面について考えてみたいと思います。
今回のテーマはやや長くなるので、2回に分けてお送りしたいと思います。

よく顧客満足度を高めることによってリピート率を高める、ロイヤルカスタマーを増やす、それがCS(顧客満足度)であると言われます。
これは一般的な考え方、行動指針だと思います。CS向上=リピート獲得の図式です。では皆さんの会社や事業におけるCSとは明確に定義されているでしょうか。「私はこうだと考える」「いやこのような定義であるべきだ」と考え方がまちまちということはないでしょうか。
それはさておき、CS向上=リピート獲得はどのような場面でも当たっているのでしょうか?以下のケースで考えてみましょう。

1.医療関連の場面
重度の糖尿病と診断された場合、インスリンを継続的に使用しなければなりません。あるいは骨粗しょう症と診断されればカルシウム吸収を増やす薬や骨吸収を抑制する薬などを一生涯に渡って服用しなければなりません。
2.コンビニエンスストア利用の場面
皆さんは独身で一人暮らし、毎日残業で帰宅が遅く、夕食はほとんど自宅近くのコンビニ弁当で済ませています。
さてこのコンビニ、店員の応対は無愛想、品揃えもよくない、レジにやたらと時間がかかる、とどめに温かい惣菜と冷たいジュースを一緒に袋詰めしてしまう。だけど自宅の半径3km以内にはこの店しか存在しない。おまけに吉野家もマクドナルドも近所にはない・・・
3.ビジネスの場面
伊藤くんは部品製造メーカーα社の営業担当です。製品製造メーカーY社はいつも伊藤くんのα社から製品を継続して購入してくれます。
しかしY社の担当である渡邉さんは、別段伊藤くんを信頼しているわけでも、心から好きというわけでもなさそうです。それに商談をしていてもいつも口数は少なく表情も硬い。実は渡邉さん、あまりコミュニケーションが得意ではありません。しかし数年前、Y社の業績が悪化した時α社は部品の値段を格安で供給してくれました。その時のα社の担当は今の伊藤くんの上司にあたる小林課長でした。渡邉さんは小林課長には恩義を感じており、他社へ部品発注を切替えるなど考えたこともないのです。

いかがでしょうか。
上記の例では、顧客満足度とリピート率の関係は見つかりません(コンビニの例などは逆に顧客満足度はかなり低いと言えます)。
ただし、このような例に該当する場合、顧客満足を考慮しなくてもよいと言っているわけではありません。誤解なさらないで下さい。例えば主治医や看護師の対応が悪るければ処方される薬は飲み続けるかも知れませんが病院を変えるという意思決定をするかも知れませんし、行き付けの調剤薬局がいつもすごく待たせらるのであれば薬局を変えるという意思決定もあり得ます。いつものコンビニにもう我慢ができなければ、頑張って自炊に切替えるかも知れませんからね。
しかし、満足はしていないけれども代替品やサービスに切替えないという場合もあるということはおわかりいただけたと思います。
ではなぜ、代替品やサービスに切替えないのでしょうか?

代替製品やサービスというものはどのような業界にも存在するものです。パソコンのビジネスアプリケーションはマイクロソフト社製のOfficeのみではありません。しかし多くの場合、Word/Excel/Power Pointを会社でも自宅でも使用している人はかなり多いと思われます。つまりマイクロソフトの製品を選択し続けているのです。これはには大きく2つの理由があると考えられます。
1.切替えるためのハードルが存在する
2.他者とコミュニケーションに不具合が生じる

まず、1点目の「切替えるためのハードルが存在する」について考えてみましょう。皆さんがずっとマイクロソフトのWordに慣れ親しんできたという前提でお話しします。
残念ながら他のワープロソフト、例えばOASYSや一太郎の経験はありません。もし今後はOASYSや一太郎を選択するとなると、最初から使い方を勉強しなければなりません。またこれまでの膨大のWord資産はどうすればよいのでしょうか。単純な文書ならいいですが、図や表など凝った文書の場合、変換は可能なのかという調査も必要になるかも知れません。あるいはWordではすごく便利な機能があったけれども、果たしてOASYSや一太郎にその機能があるのかという不安も出てきます。

これは冒頭の糖尿病の例のように、病院に対する不満が生じている場合も同様です。医師、看護師、あるいは病院の立地や病院のシステムに不満があれば、病院を変えるという選択肢を私たちは持っています。しかし新しい病院に変えるためには、病院や医師の評価調査が必要となります。少なくても今よりは良い対応をしてくれる医師や看護師がいる病院を望むはずですから、その条件の病院を探さなくてはいけません。
しかし口コミの調査だけでは不安が解消されない人もいるはずです。口コミは当たっている場合もあれば当たっていない場合もあり確実とは言い切れません。また人によってまったく反対の意見があったりもします。そうなると医療機関の調査を行っている専門企業や専門家などに依頼しなければならないかも知れません。あるいは同じ病気を患っていて候補とした病院に通院または入院した経験者に細かく質問するという調査も考えられます。
いずれにしても調査の労力と時間は必要です。
しかしそこまでお金と時間を費やしたにも係わらず裏切られたらどうしようという不安は解消されません。

まったくの余談ですが、私は10年ほど前に、休日の仕事があり、仕事の出張先で突然体調が悪くなり、駅近くの病院に緊急入院した事があります。検査も大して行われなかったのですが、その病院の医師から「入院して頂きます」と言われました。看護師さんに病棟に連れられてベットに横になったのですが、その後1時間以上も放置されていました。入院手続きも説明ももちろん精密検査もありませんでした。たまたま入院患者さんにお茶を入れてまわる係のおばさんがいらっしゃったので、現在の状況をお話しすると、そのおばさん「ここの病院はヤブ医者ばかりだから今直ぐ病院を変えた方がいいよ!」とおっしゃるんです。驚きました。ご自分が勤務する病院をヤブと断言されるのですから!
私は何とか早速医師に会い、何とか退院し新幹線に乗り地元に帰り、よく知っている病院にめでたく(?)入院しました。
この様なおばさんがいつも身近にいれば良いのですが。

話しを戻しますが、現状から新しい製品やサービスへ切替えるためのハードルが高い場合、顧客満足度とは別に同一の製品やサービスを選択するという意思決定がなされます。
私の入院の場合は、ハードルが目前に立ちはだかる前だったので別の選択が容易に行えたという例ですが。

さて、この切替えのためのハードルをスイッチングコストと言います。
ではまず、スイッチングコストについて整理してみましょう。
スイッチングコストとは、会社を変える、商品やサービスの内容を変える際に必要となる顧客の負担です。
大きくは3つ存在します。
1.学習にかかるコスト...新しい製品の使い方や維持方法を学習するのに要する時間・費用
2.取引にかかるコスト...新たな製品や会社を探し、評価し、契約するのに要する時間・費用
3.心理的なコスト   ...新たな取引先や当該の製品・サービスの質に対する不安や1から使用方法を学習しなければならないというプレッシャーの費用
となります。
逆から見れば、現在の製品やサービスを継続し続ける限りはスイッチングコストは発生しないということです。
スイッチングコストの存在により、顧客が継続的に自社製品・サービスを選択してくれる状態をロックイン効果と呼びます。つまり、ロックインされている状態ではリピート率が間違いなく高いということです(リピートの頻度(間隔)はここでは問いません)。

基礎の基礎がわかったところで、もう少し身近な製品やサービスでスイッチングコストについて考えてみましょう。

例えばビールはどうでしょうか。
「私は絶対にスーパードライ!」「ビールはラガー以外には考えられない!」とこだわる人は必ずいます。私がご支援する企業でも、会食の際に真剣にビールの銘柄を議論しはじめる人が時々います。いかにこのビールが優れているのか、そのビール銘柄が誕生した背景など実に熱く語り、しかもとても詳しいのです。そのブランド営業になれるのではないかという程です。ちなみに私は銘柄にこだわりはありません。飲めればよいタイプの人間です。味の違いはわかるのですが、その違いに抵抗感がないのです。
このように強い支持を受けているブランドや銘柄の存在は、愛飲者一人ひとりに対してスイッチングコストが働くと考えてしまいます。
果たしてどうでしょうか。

皆さんが会社帰りに同僚と居酒屋でいっぱいというケースを考えてみましょう。
居酒屋は、複数のブランドを取り扱うお店もありますが、だいたい取引ブランドが限定されています。アサヒを取り扱う居酒屋、サッポロを取り扱う居酒屋などですね。皆さんがアサヒスーパードライの絶大な愛飲者だとします。さて同僚とふらりと入った居酒屋がキリンしか置いてない場合、皆さんはスーパードライではないからと言って一切口をつけずいるでしょうか?そんなことはないですよね。
居酒屋の客という立場で考えた場合は、個人の趣向はそれほど強く消費に反映されにくいようです。

別の観点でもビールについて考えてみましょう。
いくら銘柄にこだわりがあっても、TPOにより銘柄を選別する場合があります。
普段はスーパードライを好む人でも、中華料理の場合には青島ビール、ドイツ料理の場合はヴァルシュタイナー、メキシコ料理の場合はコロナと何気なく選別している人はいないでしょうか。

さらにビールは「味覚」という非常に曖昧な要素を持っています。「味覚」は生涯変わらないという保証はありませんし、最初の1杯は敏感に感じ取っても、酔っぱらってくればわからなくなってきますよね。
また通常価格やセール時価格によっても大きく変動します。
個人との関係ではスイッチングコストは考えにくいですね。

では、ブランドと居酒屋との関係におけるスイッチングコストはどうでしょうか。この場合はブランド側の新しい提案、ビールサーバーのメンテナンス、契約価格や条件等、ブランド側の日々のCS向上活動がリピート率と深い関係にあります。
因みに、居酒屋や酒販店ではビール等の運搬代行(ブランドの営業マンが居酒屋や酒屋の店員に代わってビールを店に運ぶ作業)も重要なCS向上ポイントです。
居酒屋や酒屋に対しては、このような販売活動によりスイッチングコストは高まります。
事業の原点である「顧客は誰か」を明確化し、その顧客毎のサプライチェーン運営が重要となるということがわかります。
居酒屋や酒販店を起点として消費者のスイッチングコストを高める施策は、残念ながら見受けられません。

余談ですが、ビールに関してはこれまでの考察の通りなのですが、コーラについては厳しいようです。
コーラと言えば、コカ・コーラとペプシ・コーラが代表的ですが、ビールとは異なりコーラ愛飲者は浮気をしない傾向が強いようです。
茶系飲料やミネラルウォーターを愛飲している人にとってはコーラの味の違いなどどうでもよい事だとは思いますが。
私は以前、コカ・コーラとペプシ・コーラの飲み比べをしてみました。うーん、よくわかりませんでしたが・・・


次は携帯電話です。
ここでは携帯電話自体を対象として考えません。携帯電話自体であれば、春と秋に新機種が投入され買換え需要を喚起します。期待に応えて(?)多くの人が機種変更をしますからスイッチングコストは高くはありません。
これは日用品の如く常に買換えを促進する事によって売上を図る戦略です。
もし携帯電話が家やマンションのように一度購入したら数10年以上あるいは一生涯買換えが起きないような製品であったら製造メーカーは大赤字になってしまうでしょう。

ここでは携帯電話のキャリア(通信サービス提供会社)の切替えについて考えてみましょう。
日本で代表的なキャリアはDoCoMo、au、ソフトバンクですね。
キャリア変更にかかるスイッチングコストとはどのような事項があるでしょうか。
1.契約にかかるコスト
2.契約の煩雑さ
3.契約解除にかかる余分なコスト
4.新しい機種の機能を学習するコスト
5.サービス提供範囲の相違
6.ポイント制度で貯まったポイントと割引制度がなくなる


このうち、「4」については例えば同じキャリアであっても機種が変わる、機種のメーカーが変わる場合には発生しますから、どのキャリアであっても同様でしょう。
また「5」についても、昔と違ってどのキャリアも基地局を増やしているためそれほどの違いはないと思います。
さて、このようにスイッチングコストが多数存在しているとなると、たとえ他のキャリアの製品やサービスが魅力的であってもも切替えがなかなか行われないという状況になるわけです。
そこで、2006年10月から番号ポータビリティ制度が施行されました。それまではキャリアを変更すると自分の携帯電話番号も変わってしまっていたという問題が解消されました。この制度によりスイッチングコストは大幅に下がったものと考えられます。

各キャリアはあの手この手でスイッチングコストを下げ、かつ自社への切替えを促進するための施策を打ってきます。
皆さんもご存じと思いますが、端末ゼロ円という打ち手があります。現在の携帯電話はスマートフォンが増えていると思いますが、このスマートフォンでも端末を分割払いにした表示価格ゼロ円というのが存在しています。
あるいは、キャッシュバックや通話料金の割引きという施策も多く見られます。
実はこのような施策は新規契約、他のキャリアからの切替え時のサービスであり、現在自社の顧客であり、かつ長期契約を続けている顧客に対しては大したサービスや特典はないのです。その点買い手である私たちも売り手であるキャリアもよく考えるべきではないでしょうか。
買い手からしてみれば「長年DoCoMoを使用し続けているのに、こういう顧客を大切すべきではないのか!新規の顧客ばかりを向いていないか!」ということですからね。

キャッシュバックや料金割引き、ゼロ円端末などについて触れましたが、実はこれはスイッチングコストとは別のインセンティブというものになります。
実はスイッチングコストよりも実際の営業活動の場においては、インセンティブを中心として顧客獲得に動く場合が多いのです。
しかしこれは無理もないかも知れません。と言うのも、専門的なコンジョイント分析等によってスイッチングコストがいくらになるのかを算定しない限り、スイッチングコストを金額換算するのが困難だからです。また分析・金額換算したとしてもそれはある調査サンプルの中の話しであり、現在対象としている顧客が本当にそのモデルに該当するか否かは明確にはわかりません。ましてや心理的コストは感覚的な側面が大きいため算定がますます困難とです。
しかし、だからスイッチングコストなど気にしても仕方がないと諦めないで下さい。

ところで、スイッチングコストを下げた場合とインセンティブを高めた場合でどちらが現在の製品・サービスからの切替え率が高いのかについての実証実験がされています。詳細はここでは省略して結論だけ言いますと、スイッチングコストを下げた方が切替えの確率は高いようです。勿論色々な前提条件に基づいたサンプリングの実証実験ではあると思いますが、これは我々ビジネスパーソンには大きな示唆になるのではないかと思います。
安易な値引き交渉を行う前に現在のスイッチングコストをいかに下げるかに知恵を絞ることも打ち手として有効であるということですね。

スイッチングコストの絶妙な事例をもう少し続けます。
これはある書籍にあった実話です。
今何かと注目(?)されている中国に関してです。
アメリカの業者が、ある中国の小規模製造企業に生産を委託します。中国企業はまずサンプル製品を送ってもらい、これに基づき試作を行います。試作段階で委託先から承認されれば契約・量産となります。この業者は低価格製品で自社のシェアを徐々に拡大していきます。一方の中国企業は受注量の拡大に伴い従業員を増やし、設備も増やしていきます。驚くのはコストを下げるために改善を行うのではなく、原料の使用量を少なくしてごまかしたり、製造上の手抜きを始めるのです。そしてこれ以上は採算が合わないと値上げを要請します。アメリカの業者はそんなはずはなく、十分に中国の製造企業は利益をあげているはずと踏んでいます。ここで何度も交渉が行われますが、結局毎回、アメリカの業者の方が要求を呑んでしまいます。何故か?
委託生産量が膨大になっており、今生産を打ち切られては大きなダメージになります。取引先からの信用もなくなります。かと言って代替の製造企業を中国で短期間に探す事は至難の業です。ましてや現在取引中のこの企業よりもQ・C・D・Sで上回っている保証もありません。結局、選択肢は現状の取引を継続するしかありません。今より条件が悪くなるよりはましというどちらかと言えばネガティブな意思決定といえます。
実に巧妙な戦略です。さすが中国企業と感心してしまいました。

-スイッチングコストが高い場合
-現在のビジネスに新規参入企業がない場合
-競合企業がいない場合
などは、自社が相当有利にビジネスを展開することが可能と言うことですね。
冒頭に例としてあげましたコンビニエンスストアはこの典型ではないでしょうか。顧客が不満を抱きながらもロックインされています。

マイクロソフト製品の話しに戻りますが、Office2003から2007へアップグレードした途端に私は作業効率が大幅にダウンしてしまいました。とにかく使いにくいのです。以前はきめ細かく設定出来たグラデーションもいまひとつ。これって本当に同一製品なのだろうか、本当に機能が向上しているのだろうかと感じます。しかし他のアプリケーションに切替える術もありません。不満を持ちながらも私自身、ロックインされてしまっているわけです。

皆さんの仕事の現場でもスイッチングコストは発生しているはずです。

例えば基幹システムを再構築する場合はどうでしょうか。
一時期ほどの勢いはなくなりましたが、基幹システムにERPパッケージを適用する場合があります。どのERPにするか、どのITベンダーを採用するか、社内で色々と検討して最終決定します。さて、プロジェクトが始動するとベンダーのPM(プロジェクトマネージャー)の対応が芳しくない。こちらから要求したことのみしか対応しないならまだしも、要求に対しても満足に対応出来ない場合もあります。顧客のプロジェクトは何度も改善要望を出しますが十分とは言えません。そこでPM交代を要求しますが、交代したPMも芳しくありません。この時点で顧客は大きな代償を払うことになります。ベンダー側の引継ぎが十分なされていない場合、新しいPMにまた同じ事を説明しなければならないという場面が初期段階では多々発生してしまいます。これはスケジュール遅延のリスクを高めてしまいます。

さて新しいPMにも不満を持ちつつも、また高い代償を払うのもつらいためこのPMに頼りながらプロジェクト活動は継続されます。そしていよいよシステム稼働時期を迎えます。稼働初期はさまざまな問題が発生しますが、ここでもベンダーの対応とスピードが芳しくありません。顧客プロジェクトメンバーは爆発寸前です。しかし毎日必死の努力を続けようやく定着化していきます。徹夜まがいの日々が続きもうボロボロの状態です。

ベンダーとはその後も保守契約がありお付き合いしていかなければなりません。つまり満足していないとしてもベンダーにロックインされるわけです。途中でベンダーを切替えた企業や、ERP導入中に機能面で無理と判断し全面的に手作り開発に切替えた企業も私は知っていますが、よほどの資本力がない限りロックインされるのが普通です。

顧客プロジェクトメンバーは当事者ですから、社内からの不満や苦情に対して自分達も被害者だとは言えません。つらい立場です。
しかし、ベンダーさんを擁護するわけではありませんが、ベンダーさんも別段手を抜いているわけではないのです。ただ顧客ニーズと自社の姿勢やスキルにアンマッチがあるということです。
このような事態に陥ることを回避するため、私は、パッケージやベンダーを評価する際には評価基準を明確化するお手伝いをしているのですが、必ず「パッケージに重みをつけて選定してはいけません。パッケージは改良や追加開発すれば結局はどの製品も同じになります。重要なのはPMがいかにしっかりしているかです。この点に注力して選定して下さい。」と顧客に強く申し入れます。

さてさて、スイッチングコストの説明や例題だけでかなり長くなってしまいました。
次回は、同一製品・サービスを選択し続ける2点目の理由「他者とコミュニケーションに不具合が生じる」と、今回のテーマのまとめを行いたいと思います。


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未知世界を理解しよう
みなさん、こんにちは。

今日は本ブログの主旨からやや離れてしまいますが、映画をご紹介したいと思います。
もう既にご覧になった人も多いと思いますが、ご覧になっていない皆様のためのご紹介です。
私は半年ほど前に知り、これまでに2回鑑賞させて頂きました。

2時間以上の映画ですので、休日にゆっくり鑑賞下さい。
絶対に勤務時間中に会社のPCでは観ないで下さいね!

映画THRIVE 日本語版


今日はここまでです。
みなさん、未来に向って叡智を出しましょう!!
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製品特性に合致した生産方式を採用する
みなさん、こんにちは。

今回は、生産管理の中の生産方式、管理方式について考察してみたいと思います。

生産方式には大きは下記の4タイプに分類することが出来ます。
 ・個別受注生産(Engineer to Order=ETO) 都度、顧客別に製品仕様を確定し、製品を製造する
 ・受注生産(Make to Order=MTO) 繰返し性があり、顧客からの注文を受領してから製品を製造する
 ・受注組立生産(Assemble to Order=ATO) 中間製品やモジュールまで見込みで生産し、顧客から確定注文を受領してから最終製品まで製造する
 ・見込生産(Make to Stock=MTS) 自社の販売予測に基づき製品を製造する(客別から注文を受領したら製品を出荷する)

ERPという基幹業務を対象としたパッケージの中でInfor ERP LN(旧プロダクト名はBaan)がありますが、このパッケージでもCODP(Customer Order Decoupling Point)というコンセプトで生産方式に対応しています。
ただCODPは、私の考えでは
 -サプライチェーン上のどこに在庫ポイントを持つか
 -要求リードタイムと供給リードタイムの差異はどの程度乖離があるのか
に主眼が置かれていると思います。

確かに、顧客が今日連絡してきて納期は30日後と指定された場合、明日から生産を開始しても18日で製品が完成し、納品で1日かかるのであれば、供給リードタイムは19日、翌日着手のため、トータルで20日です。
要求リードタイムとは10日も差があるため、これは注文を受領してから生産しても間に合う「受注生産」となりますね。

コンビニエンスストアで売られている商品は顧客から注文を受けてから生産していては間に合いません。見込生産の範疇とります。
マクドナルドのハンバーガーはどうでしょうか。
ハンバーガーのパテを注文を受けてからこねて焼いてと生産していは、ファストフードとは言えません。かと言って作り置きのハンバーガーではく顧客は満足はしないでしょう。受注組立生産となります。ただし、バンズを含めハンバーガーの具材を半製品ではなく、原材料と捉えるのであれば受注生産になりますが。

この様な考察をしてみると要求リードタイムと供給リードタイムとの差異に基づくというのは確かでしょうね。

しかし、モノづくりとはそれ程単純ではありません。
例えば自動車を例にとってみましょう。
自動車を受注生産方式と思っている人はいないでしょうね?
自動車は受注組立生産方式です。
JIT生産方式、カンバン方式、プル生産方式、リーン生産方式など様々な呼称がありますが、これはあくまでも生産の流し方・つくり方およびその管理方法に焦点を当てた呼称です。
さて、自動車では3ヶ月計画をローリングし、これを各サプライヤーに内示の形で提示します。
各サプライヤーでは内示に基づき更に部材の発注や製造を行います。
生産された自動車は、見込生産計画に対して顧客からりオプションや色が確定後、最終製品まで持っていきます。
この様に、リードタイムだけでは決定できない「製品特性」を生産方式には反映しなければなりません。
また、製品によってはバリエーションの条件によっては加工条件、生産技術要件を変更しなければならない場合もありますし、大型装置や精密機械の場合は設置条件により製品仕様を一部変えなければならない場合もあります。

次に生産数量について考えてみましょう。
新製品でどんどん売れる製品は非常に繰返し性が高いものです。
ある製品が思わず大ヒットし増産につぐ増産、それでも生産が需要に間に合わず顧客が待たされるという、何とも嬉しい経験をされた企業もあると思います。
需要量が供給量を上回っている場合、受注生産とは言っても能力に余裕があれば実質的には見込生産となります。
一方、これ迄見込生産方式を採用していた生産品目がどんどん需要が減ってしまった場合はどうでしょうか。
見込生産方式の入力情報は確定受注情報ではなく、需要予測や販売見込情報となります。
需要の減少や日による実需のバラツキが大きく見えはじめると、需要予測や販売予測情報が当たらなくなります。
この様な精度の低い情報に基づき見込生産を行っていては在庫が積み上がるリスクが高まります。
当然ながら計画は実需が確定するギリギリ所で策定した方が在庫リスクは軽減されます。
受注生産に切替えれば在庫問題は問題ではなくなる訳です。

いかがでしょうか?
生産方式はリードタイムの差異のみで決めればよいというものではなく、製品特性や製品の売れ方傾向も考慮しなければならないということです。
そして、一度決めたら永遠に変えないということでは適切な計画コントロールは行なえません。
受注生産方式を採用しなければならない生産品目を見込生産方式で計画し製造現場へ製造指図していては、製造途中で「急げ!」「止めろ!」「作り直し!」が頻繁に発生してしまい、計画を誰も信用しなくなってしまうからです。
生産技術の革新度や、リードタイム短縮活動の達成度、需要傾向などを定期的に評価し、これに基づき生産方式の見直し検討が行われる仕組み構築が重要となります。

因みに、新製品と言ってもバージョンアップ品(後継機種)などでは、現行機種と同じ生産方式を採用するのが一般的です。
しかし、自社にとってまったくの新規製品の場合はどの様に生産方式を設定すればよいのでしょうか?
新規製品では、顧客の要求リードタイムも自社の供給リードタイムもまだ実績がありません。
顧客の仕様自体も色々と変更になる可能性がありますので個別受注生産方式を取らざるを得ません。
そして需要量の変動、要求リードタイムの実績が上がるにつれて生産方式の見直しをかけるべきでしょう。

ところで、これまでに見てきました「リードタイム差」とは、「顧客は一体いつまでなら待ってくれるのか」と言い換えることができますね。
平均的なリードタイム差はあくまでも供給側の見方です。一方の「いつまでなら待ってくれるのか=いつまで待てるか」は需要側の見方となります。
マクドナルドの例を挙げました。顧客を出来る限り待たせないためと、顧客が満足してくれるための生産方式を採用しています。
更に企業努力で生産リードタイムを極限まで短縮するための設備改善や業務改善も実施しています。
しかし、マクドナルドでイライラを経験した人も結構いるのではないでしょうか?
「いつまで待てるのか」とは人により千差万別、また同じ人でもTPOにより異なります。例えば休日に家族と一緒にというシーンでは時間と心に余裕があります。しかし仕事中で顧客との商談があり大変急いでいる、定食屋さんでゆっくり食事をしている時間はない、ならばマグナルドでドライブスルーして車の中でというシーンはどうでしょうか。
後者の場合、速さと移動しながらの条件で絞り込んだ結果がマクドナルドのはずです。この場合の待ち時間は長くても3分程度を想定しているはずです。しかしマクドナルドのドライブスルーで10分も待たらどうでしょうか?極限とはいかなくてもイライラは感じますし、期待に裏切られたとも感じるはずです。
この様に、日々リードタイムを短縮するというテーマと、繁忙期にも予定したリードタイムが本当に遵守出来るのかというテーマを追求することは生産管理の範疇に留まらず、企業経営にとっては極めて重要となります。
同じ製品で要求リードタイムが異なる場合はあります。
 - 季節により要求リードタイムが異なる
 - 同じ顧客でも発注元(支店等)や地域により要求リードタイムが異なる
 - 同じ製品でも顧客により要求リードタイムが異なる
この様な分析は適切に実施されているでしょうか。
サプライチェーンの柔軟性とはこの様な点も考慮して構築しなければならないはずです。
しかし、あまり細かく分類して、同一製品でも顧客毎にリードタイムや生産方式を変えていたのでは管理は煩雑になりますし、計画時点の検証にも多大な工数を要することになってしまいます。また製造単位も、本来であれば期間内に同一製品の需要があればロット(まとめ)生産したい所ですが、生産方式を細分化すると別品目扱いとなってしまいロットにまとまらなくなってしまいます。結果として生産効率は下がってしまいます。
この点は企業毎に、顧客への対応度と生産効率をうまくバランスさせる検討が必要となります。

さて、製品あるいは製品グループ毎に要求リードタイムを決定する際には、平均、最大、最小などを算出・分析し、この中からどの値を採用するか決めなければなりません。
最小リードタイムに対応すると決めれば、すべての顧客からの注文に対応することが可能となります。
最小リードタイムのグループが全体の僅か20%程度であれば再検討が必要です。
この場合、リードタイム差を解消するためには受注生産では対応出来ないため、受注組立生産方式か見込生産方式を採用いることになります。
つまり在庫のリスクが発生してしまいますね。しかし残念なことに顧客にとっては、自社がいくら在庫を抱えているかなど関係はありません。顧客は自分達のQ・C・D・S(品質、価格、納期、サービス)に対応してくれればされて良いわけですから。

平均値のリードタイムで全体の70%をカバーしているのであれば、残りの30%についてどう対処すべきか検討が必要でしょう。
できるだけ早く注文を受領出来る様に営業が対応する、納期交渉を行うなども打ち手となります。
この時に重要なことは、平均リードタイム(生産側が営業に約束したリードタイム)を営業が正しく認識した上で営業活動を行なうことです。
一人の営業マンが「しかし顧客から強く要望されているのだから仕方がないではないか、早く生産してくれないと失注してしまう!」と言い出したら、この仕組みは崩壊します。

生産方式は生産基準情報です。基準はコロコロと変えるべき要素ではありません。

さて、一度「我が社の生産方式」を整理してみては如何でしょうか?
うまく設定されていない企業、一度設定して見直しを行っていない企業では生産計画と実行の間にギャップが生じているはずです。


みなさん、未来に向けて叡智を出しましょう!
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全体最適視点で事業基盤を強化する
みなさん、こんにちは。

今回は全体最適の視点に基づく事業基盤強化について考察してみたいと思います。
世界中で起きている経済の低迷により、需要は減少し、価格競争力は益々激化しています。
特にグローバルな競争では、低価格な海外企業との競争は並大抵のことではありません。
更に円高の進行により輸出型企業には大きな打撃となっています。
シャープ、パナソニック、ソニーといった大企業が大きな赤字に陥っているということは皆さんもご存じだと思います。
どの企業も支援のためにお伺いすると閉塞感が漂っています。
こんな時こそ、前回考察しました強いリーダーシップを発揮する必要があるのですが・・・

直接部門、間接部門を問わず日々取組む職場の改善。
改善に真剣に取組むこと自体は大変重要なことです。
真剣に改善に取組んでいらっしゃる姿には本当に感服致します。
但し、大切なことはサプライチェーン全体を俯瞰した上で「最も効率がよくコストが低い業務のあり方」を設計した上で、各職場の改善・改革に取組んでいるか否かです。
例えば、プレス工程で設備を改善し、単位時間当たりの生産能力が上がったとします。
しかし次の塗装工程の能力が著しく低い場合、塗装工程の前に仕掛の山が出来るだけで全体としてはリードタイムは短縮されません。
また、生産数量をコントロールしていなければロット生産の場合、製造原価も下がらないことになります。
各職場がバラバラに改善をすると、この様に従来は発生しなかった不要なコストが別の職場で発生してしまうことがあります。

別のケースで考えてみましょう。
経済環境の悪化に伴い、製造業の海外移転(流出とも言われていますが)が加速しています。
今、色々と問題になっている中国の場合、日本企業は既に14,000社以上存在しています。
経済産業省のアンケート調査によりますと、海外展開の理由の1番は「事業コスト-50%程度」となっています
(第2位は「消費地に近い-20%程度」です)。
やはりマスメディアで指摘されている様に人件費を抑制し、コスト競争力を高めるというのが主たる要因のようですね。つまり「海外市場で我が社の技術や製品を拡販する!」という前向きな理由よりも、コスト上昇による利益圧迫のため仕方がなくという後ろ向きな理由が大きい様です。

現在、中国も人件費の高騰が問題視されています。
日本と中国の年収比較で見ますと、2000年に24倍であったのが、2009年には7.5倍にまで縮まっています。
やっと中国で事業基盤を築いた所という企業にとっては何とも頭の痛いことのはずです。
さて、話しを戻します(このあたりのお話しは、セミナーで正確なデータもご提示しながら説明させて頂いておりますので関心があるお人は、ぜひ私の会社のホームページからご連絡下さい)。

http://www.blisc.co.jp/ 

製造機能のみを海外に移転した場合、製造に必要となる材料は日本から輸出する場合が多いです。
もちろん、現地調達、現地生産を行っている企業もありますが、長年海外で操業している企業の中で現地のサプライヤー開拓が進んでいる企業か、国内生産時から海外からの調達比率を高めている企業に限られます。
生産機能の海外移転と同時に現地調達というのは、グループ企業や企業内の別事業が既に拠点を構え、現地調達を進めており、共通部材が多い場合以外は困難です。

さて、生産した製品が現地で消費される場合は良いのですが、これが国内で消費される場合、今度は海外から日本へ輸出しなければなりません。
つまり、部材の日本⇔海外拠点移動、製品の海外拠点⇔日本移動が生じるため物流コストは高くなる上、リードタイムも長くなってしまいます。
更に詳細に見れば、海外現地法人で働く従業員の仕事に対する能力、モラルが高くない場合、常に現場は混乱しています。
私がご支援しました日経企業の場合も常に問題が発生し、日々問題の火消しに飛び回っている状態でした。
不良率は高く、きちんとした業務手順と基準も不明確で遵守もされない状態では、何とか生産し、出荷しているというのが実態です。
(すみません、悪口を言っているわけではありませんから!)
また生産計画の精度が悪い、在庫管理の精度が悪いなどの場合、どうしても日本側でも現地側でも在庫を多めに保有しなくてはならないという問題も発生します。
せっかく製造コストを下げるために海外に進出したはずなのに、トータルで考えるとそれほどのコストダウンにはなっていないというケースが多いのかも知れません(これについては統計を取っておりませんので推測ですが)。

中国市場の話しをもう1つ。
南沿海部の珠江デルタは世界中の製造企業が密集する集積地として知られています。
ここの人件費が高騰し、サプライヤーとの取引金額も割高になっています。
ここに拠点を置く企業の中には既に中国近内でも内陸部に移転している、あるいは計画している企業も増えている様です。
しかし、内陸部で人件費が安くなったとしても、従来通りのサプライヤーとの取引を継続するのであれば、外注コストや材料コストは下がりません。自動車を例にとれば、製造原価の70%程度が材料費になっています。
また、詳細の理由は今回は割愛しますが、中国では物流コストが先進国に比べてかなり割高です。
場所にもよりますが、従来の南沿海部で「集積したサプライチェーン(自動車に見られる企業城下町型集積)」を構築していたとすれば、移転に伴う物流コストが上昇し、リードタイムが長くなってしまいます。

さて、ではどうすればよいのでしょうか。
この場合は現在のサプライチェーンネットワークと移転後のサプライチェーンネットワークを描くことが必要となります。
ここが重要です。
拠点統廃合や新規拠点構築、生産や販売比率の改変を行う場合、私し必ずプロジェクト活動でサプライチェーンネットワークを描きます。しかし全体像を十分に把握出来ていない企業が多いことに驚かされます。
自拠点内(工場内)のサプライチェーンについてはある程度明確にはなるのですが・・・
これでは全体を俯瞰した上で最適な改革を実行すること自体にムリがあるというものでしょう。
次にネットワーク上のそれぞれにおいて、でかかるリードタイム、コスト、そしてリスクを明らかにしなければなりません。
見落としてはならないのが、明確化が難しい事象です。
例えば、開発機能は日本にあって、生産機能のみを海外に移転した場合、初期ロットの立上げに要するリードタイム、そのために拠点間で調整に要するリードタイムなどは見落とされがちです。
また、リスクという面も重要ですね。
例えば、生産拠点を海外に移転するということは製造技術やノウハウが流出するということです。
この点を十分に覚悟した上で意思決定が行われなければなりません。
あるいは、中国人が日本に旅行に来る際は秋葉原などで家電製品などを大量に購入していくということは皆さんもお聞きになったことがあると思います。
(そういえば、最近の家電量販店では店員がちゃんと中国語等で対応していますね!)
この時、日本国内で製造されたものしか購入しないそうです。
日本の有名ブランドであっても、海外で製造した製品は信頼性が低いという理由で敬遠されるそうです。
企業の信頼度、ブランド力とでも言い換えられますが、この点が損なわれるリスク要因も見落としてはいけないでしょう。

会社の命で大規模なサプライチェーン改革や海外移転を任されたご担当様、さてどう改革する計画を策定されますか?
既に計画済の場合、全体最適を追求なさってますか?

みなさん、未来に向って叡智を出しましょう!!
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マネジメント リーダーシップ 役割の重要性
みなさん、こんにちは。

今回はマネジメントとリーダーシップについて考察してみたいと思います。
企業の改革を支援させて頂く際には、必ず改革のプロジェクトを編成して頂きます。
10年程前であれば、専任メンバー体制でプロジェクトを発足し、毎日プロジェクトルームで早朝から深夜まで業務改革について議論をしていました。
しかしリストラと称して人員が削減され、一方で日々の業務が減らない状況では、プロジェクト活動に終始することは困難となり、今日では現業との兼務のメンバーで構成されることが主流です。
これは極めて大変なことです。
プロジェクト活動では将来について知恵を絞り、職場へ戻れば現実と向き合わなければならないのですから。
残念ながら、頭の切替えが不得意な人はプロジェクト活動においても現状の延長線上で考えてしまいます。
こんな時は、ひと息おいて「よし、今から自分は別人になるんだ」と自分自身に言い聞かせるのが良いのではないでしょうか。

さて、プロジェクトには体制と明確な役割分担が必要となります。
しかし、体制図はあるものの、役割が不明瞭なケースが散見されます。
一般的には下記の様な体制が組まれます(すみません、次回からは図表を貼り付けます)。

    プロジェクトオーナー(経営層、役員クラス)
           ↓
    統括マネージャー(事業部長、部門長クラス)
           ↓                 ←  事務局
    プロジェクトリーダー(部門長クラス)
           ↓
    目的別チーム(複数の場合あり)


さて、上図を見て、皆さんは各担当が具体的にどの様な役割を担うとお考えでしょうか?

うまくプロジェクトを運営できないケースでは、あれもこれもすべてプロジェクトリーダーに仕事が集中してしまいます。
自ら改革テーマを検討し、アウトプットを作成し、チーム毎の進捗チェックを行い、全体のスケジュール管理と課題管理を行い、プロジェクトオーナーや経営層へ活動状況をを報告し・・・と大変です。
結果的にあれもこれも中途半端になり、進行の雲行きが怪しくなってしまういます。
なぜこの様になってしまうのでしょうか?
原因はプロジェクト活動で発生する作業毎に明確な役割分担を設定していないためです。
役割を明確化し、プロジェクト活動が本格的に開始される前に全関係者で役割を確認する場が必要となります。
また、その役割を確実に実行するためにはどの様なスキルや振る舞いが求められるのかも整理しなければなりません。

例えばサプライチェーン改革のプロジェクトを立ち上げることを例とします。
各業務領域~設計、販売、生産、調達、物流、製造などからチーム編成されるとしましょう。
具体的な活動事目としては、
 -各業務領域毎に改革テーマを策定する
 -改革テーマを具体的に構想する
 -現状と改革後の変更点を可視化する
 -改革テーマを実現するための業務の手順と基準を策定する
 -業務領域間の流れに矛盾がないか検証、調整する
 -業務全体を具体的な顧客や製品に基づいて一気通貫に検証、調整する
 -改革後の業務を管理者、実務者へ説明、教育する
 -業務領域毎の進捗を管理する
 -業務領域毎の課題と対策方法を管理する
 -プロジェクト全体の進捗を管理する
 -ヒト、モノ、カネに係わる追加投資に関して経営へ相談、上申する
 -会合の議事録をとる
 -会合に日程管理を行い、開催の通知を行う
 -改革が実現する様に士気が上がらないメンバー達を鼓舞する
 -プロジェクト活動期間中に発生しそうなリスクを洗い出しリスクヘッジの監視をする
 -プロジェクトメンバーからの相談に応じる
など多岐に渡りますね(勿論、上記以外にも山のように作業項目はあります)。
この1つ1つの作業項目を誰が担うのか、どう担うのかを事前に確認・共有します。
事前準備を行わず「走りながら考える」に強く依存すると、どこかで破綻しかけてしまいます。
「そのくらいのことは言わなくてもわかるだろう」ではいけません。
実は言わないからわからない人が意外に多いのです。

作業項目全体を事前に抽出・整理することは活動全体像を俯瞰することにもなり重要な第1歩となります。
最初はそれほど細かな作業項目まで抽出しなくても大丈夫です。
ただし、大項目でヌケ、モレが生じない様な点検は必要です。

さて、上記の作業項目の中でマネージャーが行う項目、リーダーが行う項目は一体どれでしょうか。
多くの企業でリーダーシップとマネジメントの教育をさせて頂いておりますが、両者を混同したり同一視する場合が圧倒的に多いと痛感しています。
マネジメントとは管理・統制すること。組織メンバーが円滑に業務が出来るように環境や制度を整備することです。
一方、リーダーシップとは組織メンバーに働きかけ、動機付けを行い、組織をより良い方向へ向わせることです。
よく私がプロジェクト活動で訴求する事に「一体化」があります。
これは当然、リーダーシップの範疇になります。
しかし、組織の上に立つ職制の人はマネジメントとリーダーシップ双方を発揮しなければなりません。
管理・統制のみでは変革は起きませんし、問題意識・当事者意識・危機意識も起きません。
また、動機付けだけでも事業運営は行えません(ヒト、モノ、カネの予算統制がしっかり行えなければ事業は成り立ちませんよね)。
人材育成を行う際には、マネジメント能力の育成を行うのか、リーダーシップ能力の育成を行うのかを明確化しなければなりません。
そして、教育対象メンバー一人ひとりについて、どちらの能力が高いのか、どちらの能力を高めなければならなのかを把握しなければなりません。
そのためにもこの2つの能力とは何かをぜひ整理して欲しいものです。

今回の例では、予算管理、全体スケジュール管理はプロジェクトマネージャーが担うべきです。
プロジェクトリーダーは各チームのアウトプットレビュー、課題に対して適切な方向付けを行う、今後の活動をどう展開していくのか予測していく、チーム間の調整を行うなどの役割を担うべきでしょう。
チームリーダーがチームメンバーや範疇の職場からのプレッシャーで潰されない様なサポートも重要です。
この点、マネージャーとリーダーの間で事前に話し合っておかなければなりません。

さて、これからプロジェクトを立ち上げる予定の皆さん、あるては既に活動中の皆さん、役割分担は整理されていますか?
名前だけ体制図に入っているけれど役割を遂行していないなんいいうメンバーは一人もいませんよね。
マネージャーとリーダーの役割は大丈夫でしょうか?
マネジメントとリーダーシップ開発のための人材育成は実施されていますか?

みなさん、未来に向って叡智を出しましょう!!
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在庫は必要か? 削減は可能か?
みなさん、こんにちは。

さて、第1回は「在庫」に関して考察してみたいと思います。
様々な製造業で製品在庫、仕掛品在庫、中間部材在庫、原材料在庫を抱えています。
何故在庫を保有するかと言えば、顧客への急な要求に応えるためと言うのがおおかたの理由とされています。
しかし皆さんご存じの通り、在庫は資産であり、資本が投下された結果です。
従って、売れなければ資金のムダであり、経営を圧迫してしまいます。
先の東日本大震災の時、東北地区のサプライチェーンが寸断され、モノが造れない企業が急激に増えました。
(被災された企業並びに地域の皆様には、心よりお悔やみ申し上げます。未だに会社が再起できない企業の皆様、どうかこの苦難を乗り越えて下さい)
この時、リーン生産(在庫を持たないモノづくり)の弊害であると指摘する評価もありました。
しかし、在庫を大量に抱え、経営を圧迫する様な状態が恒常的に続けば、業績が悪化した途端に企業運営に支障をきたすというリスクはどうするのでしょうか。

ある自動車関連メーカーでは、資材費用のコストダウンのために、ある部材を3年分まとめて購入していました。(何と3年分ですよ!!)
確かに大量に購入し価格交渉力を高めることにより、1個当たりの単価は下がります。
しかし、当期に使いもしない材料のために資本を投下するのは好ましい施策とは言えません。
皆さんは、「安かったから」といってトイレットペーパーを3年分も買いだめなどしませんよね。
私など、「どうか3年間は設計変更により使われない部材になりません様に・・・」と願う限りです。
「必要なモノを、必要な時に、必要なだけ」生産・調達するというのがモノづくりの基本原則という事を十分に理解したいものです。

ある半導体関連装置のメーカーでは、新たな生産工場を建設し、同時に併設して物流センターも建設しました。
実に立派な建屋です。
この物流センターにより、これ迄製造ライン付近に置かれていた完成品や生産が一端止められた仕掛品が移動されました。
製造部門ではこれ迄、どこに何が滞留しているのか把握するのに多大な工数を割いていましたから、この点だけを捉えれば効果はあったのかも知れません。
しかし、巨大な倉庫はどんどん在庫を吸収していきます。
案の定、倉庫は過去最大量の在庫を積上げてしまいました。
倉庫があるから、まだスペースがあるからどんどん生産するという事が正当化された事例と思います。
在庫に対する厳格な基準を持たないと、在庫は積みあがっていきます。
皆さんもワンルームの住居から例えば2LDKの住居に引っ越すとたちまちモノが溢れてしまうという経験はありませんか?
その逆に、2LDKからワンルームに引っ越すと大変な事になります。
モノが入らず、選別して捨てるか売るかしなければならなくなります。
日頃のチェックは怠ることができません。
本当に要るものか、今でなければならないのか、合意形成ができた上での判断なのか・・・
この考え方は計画担当だけが持てばよいというものではありません。
経営者も事業部長も当然必要となります。

ある大手の精密装置メーカーでは、顧客の納期に対応するため、在庫を積上げていました。
しかし在庫が積みあがり過ぎて問題視されると、在庫削減に力を入れ始めました。
その結果在庫は削減されたものの、営業部門からは顧客の納期に対して遅延が多発していると苦情が工場部門へ寄せられます。
さて、どうしたかと言いますと、結局在庫をまた積上げ始めたのです。
これを一定のサイクルで繰返していました。
ここで改革の視点が必要となります。
ポイントは3点あります。
1.在庫とリードタイムの関係を理解する
そもそも、なぜ在庫を持たないと顧客の要求に応えられないのでしょうか。
顧客が要求してくる希望納期に対して、要求を受領してから生産し製品化するまでの期間が長いからですね。
一般的には  要求リードタイム<供給リードタイム  と言います
このリードタイム差を地道に短縮していく施策を全社を挙げて行わなければ、在庫は減らすこともなくすこともできません。
「我が社はリードタイムが長くて・・・」と他人事の様に発言される管理者が時々いらっしゃいます。
また「リードタイム短縮は過去にも行ったが成功しなかった。我が社では無理です」と説明される場合もあります。
何故失敗したのか、何故定着しなかったのか、この点を究明することが重要です。
2.在庫の定義を明確化する
上記の精密装置メーカーのケースもそうですが、「在庫削減○○%!」と一律に行うと失敗します。
在庫には様々な分類があります。
 ・計画のミスにより造り過ぎてしまった売れない製品在庫
 ・購入価格変動が大きいため安値の時に購入した余剰な材料在庫
 ・希少性が高いため、多少のリスクでも他社よりも先に確保しなければならない材料在庫
 ・生産に必要な数と購入単位(ロットサイズ)の差異により発生する材料在庫
 ・発注期間と日々の使用数との関係によりショートして生産が止まらない様にするための安全を見た中間製品在庫
などなどです。
この様に在庫の区分を明確化し、各関係者間で共有した上で、どの在庫をどれだけ削減するのかという計画を立てなければ、本来必要な在庫が欠品してしまうリスクが高まります。
3.生産計画の精度を高める
営業部門の販売計画と工場部門の生産計画が乖離している企業があります。
販売計画の精度が低く、直近になって緊急の受注が入ってくるということは、どの企業でも経験していると思います。
しかし、だから生産計画は工場部門で独自に策定してよいというものでもありません。
営業部門は販売計画を、工場部門は生産計画を双方にコミットメントしなければなりません。
この時、在庫責任も明確化することが重要です。需要予測が外れて売れなくて積み上がった製品在庫はどの部門の責任になるのか、製品在庫でも受注生産品目と見込生産品目は同じ責任部門とするのか、材料在庫は工場のどの部門が責任を担うのか、です。
その上で、営業部門と工場部門が連携して生産計画の精度を高めていく必要があります。
また、計画策定に必要な情報とは何か、その情報の精度・粒度・範囲はどうあるべきかも重要です(この点は別の機会に考察したいと思います)。

やや話しは変わりますが、東日本大震災以降「脱原発依存」が強く叫ばれています。
この時、コスト比較やメリット、デメリットが検討・提示されたりするのを皆さんもご存じだと思います。
「原発の方がコストが安く、もし原発を廃止し水力や火力にすれば、消費者の負担が○○円増えます。だから原発は止めない方がよい」
なるほど、分析した上での提言であり、説得力がありそうです。
しかし、ここでもう少し深く考えてみる必要があります。
「原発はもう存続させない」この様な前提は成立しないのかと深く考えてみるのです。
原発が存在すると前提条件を置くからこそ、原発と他の発電方法との比較となってしまうわけです。
原発を前提条件としなければ、もはや原発と他の発電方法との比較など意味を持たなくなります。

在庫も同様です。
私も様々な製造企業の改革をご支援している中で、在庫削減効果の試算をする場合があります。
しかし、これは「在庫がある」ということを前提とするから現状との比較となるわけです。
「在庫はない、認めない」とするならば、在庫がある場合との比較は意味がなく、むしろ在庫がなくても供給に支障を来たさないサプライチェーンとはどうあるべきかを真剣に検討する方向となるはずです。

さて、皆さんの会社では在庫に対して日々どの様に取組んでいらっしゃいますか?
在庫を機械のかたまり、あるいは機械を構成する部品と見ていると昨日と捉え方は変わりません。
しかし1万円札が所狭しと積上げられていると捉えると、気が気ではなくなるのではないでしょうか?

みなさん、未来に向って叡智を出しましょう!!
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はじめまして
はじめまして、渡邉と申します。
有限会社BLiSCという会社で経営コンサルティング業を営んでおります。
会社設立は2005年です。
これ迄HP開設の必要がなかったため、ずっと放置しておりましたが、最近セミナー等のお話しが増えて
きたため、HP開設が必要と思い、現在最終段階のチェック中です。
HP開設に際しまして、会社からのご案内とは別にコンサルタントとして色々と情報を発信していきたいと
思い、本ブログも同時に始めることとしました。
経営に係わる事、経済に係わる事などを適時発信して行きたいと思います。
どうぞ、よろしくお願いいたします。

特に経営に係わる情報は、コンサルティングの現場の情報を中心にお伝えしていきます。
様々な企業様が何に悩み取組んでいらっしゃるのか、改革推進の上でどの様な展開をして成功(または失敗)しているのか、具体的な内容を予定しております。
勿論、企業名は守秘義務がございますので明かせませんが・・・

製造業に限らず、現場は正に生き物です。
日々状況が変わり、従来とは異なりマニュアル通りには対処できない事象が多発しています。
この時求められるのが、個人のズバ抜けた能力ではなく組織力です。
皆さんの会社で少しでもご参考にして頂ければと思っています。

どうぞ、よろしくお願いいたします。

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